フリースクールガイドライン

 NPO法人フリースクール全国ネットワークでは、各フリースクールでガイドラインを作成する際に、参考になるよう作成しましたので、基本ガイドラインの公開をいたします。

 ガイドライン作成には、当団体の加盟団体8団体が実行委員会を組織し議論を重ねてきました。全9回の会議を経てガイドラインをまとめました。

 当団体ではすべてのフリースクールが、当ガイドラインを指針とすることで、子どもをはじめ関わる全ての人の人権が護られ、万が一、人権侵害が起きた場合には早急に対応することができることを目的とし、フリースクールが、子どもたち、そして社会から信頼される場となるように、当ガイドラインの趣旨を理解し、活用いただくことを願います。 

フリースクールガイドライン

このガイドラインは、各フリースクールでガイドラインを作成する際に参考になるよう作成しました。

1.はじめに

すべての子どもに自分らしく学び育つ権利があり、その権利を保障する場の一つがフリースクールです。
フリースクールを運営する中では、様々な問題が起こり得ます。「子どもたちのために良いことをしている」などの心の驕りが無いかを常に見つめる必要があります。フリースクールにおいて、子どもたちが安全に安心して学び育つためには、組織・人員・活動のすべてが、関わる全ての人の人権を尊重したものでなければなりません。
すべてのフリースクールが、子どもたち、そして社会から信頼される場となるように、当ガイドラインの趣旨を理解し、活用いただくことを願います。

【フリースクールガイドラインの理念と目的】
フリースクールガイドラインは、「子どもの権利条約」の理念に基づき、フリースクールにおいて、子どもが安心安全な環境の中で学び育つことができ、子どもも大人も安心して関係を築くことができるように策定し、フリースクールに関わる全ての人の権利擁護の実現を目指します。
すべてのフリースクールが、当ガイドラインを指針とすることで、子どもをはじめ関わる全ての人の人権が護られ、万が一、人権侵害が起きた場合には早急に対応することができることを目的とします。

【子どもの権利条約】
子どももおとなと同様に権利を持つ主体として、おとなと対等な存在と認め、子どもの人権を保障することを定めた国際条約です。1989年に国連で採択、翌年に発行し、1994年に日本も批准しました。子どもの権利条約では、子どもの最善の利益の実現を目指し、大きく分けて4つの子どもの権利を守るように定めてあります。

<1>生きる権利(生存の権利)

  • 命をたいせつにされる
  • 病気やケガをしたら治療を受けられる
  • 人間らしく生きていくための生活水準が守られる

<2>育つ権利(発達の権利)

  • 教育を受け、休んだり、遊んだりできる
  • 考えや信じることの自由が守られ、自分らしく育つことができる
  • 文化的、芸術的、余暇的活動のための適当かつ平等な機会を提供される

<3>守られる権利(保護される権利)

  • あらゆる虐待や放任、搾取、有害労働などから守られる
  • 障がいのある子どもや少数民族の子どもなどは特に守られる
  • 戦争から守られ、犠牲になった子どもの心や身体が守られる

<4>参加する権利(参加する権利)

  • 自由に意見を表したり、集まってグループをつくったり、自由な活動を行える
  • プライバシーや名誉が守られる
  • 成長に必要となる情報が提供され、子どもにとってよくない情報から守られる

2.フリースクール運営のガイドライン

  • フリースクール(フリースペース等も含む)は、以下の全ての項目について、責任を負います。

(1)組織基盤について

  • フリースクールは、活動内容や場所を地域社会に開示します。フリースクールは、活動内容や場所を地域社会に開示します。(パンフレットやホームページなど)(パンフレットやホームページなど)
  • フリースクールは・フリースクールは、、団体の団体の代表者の決定・開示等、その代表者の決定・開示等、その責任体制を明確にします。責任体制を明確にします。
  • フリースクールは、フリースクールは、子どもの権利条約の理念を団体内で周知します子どもの権利条約の理念を団体内で周知します。。
  • フリースクールは、個人の思想信条を尊重します。・フリースクールは、個人の思想信条を尊重します。
  • フリースクールは、安定した活動を持続するよう努めます。フリースクールは、安定した活動を持続するよう努めます。
  • 人権に関する内部研修を定期的に開催する、或いは外部研修へ参加します。人権に関する内部研修を定期的に開催する、或いは外部研修へ参加します。

(2)運営について

  • 運営については、メンバーが意思決定に関わる機会(意見表明)を保障します。
  • 子どももスタッフも自分の意見や思いを伝えることができる環境を整えます。
  • 他者を誹謗中傷したり人権侵害となるような言動がない居場所となるように努めます。
  • 第三者で構成された相談機関を設置、あるいは、連携・協力し、その連絡先を子どもにもスタッフにも開示します。
  • 希望に応じて、活動中の事故発生等に備えるため、子どもやスタッフの保険等を整えます。
  • 人権侵害等に関する指摘を受けた場合は、速やかに事実確認を行い、人権侵害事案と認められる場合は、被害者に対して速やかに対応し、その際は二次被害防止の最善の対応を行います。また、再発防止策も徹底します。
    ※二次被害:さらなる精神的・身体的苦痛を与えること。

(3)他機関との連携について

  • よりよい居場所となるために、他の団体・機関・専門家等と連携を図り、協力を得ます。

(4)運用について

ガイドラインを実用性・実効性があるものとするため、次のことを守ります。

①団体内部への周知

  • スタッフ(含むボランティア)採用時には、ガイドラインについての説明を行い、理解と同意を得られた場合に採用することとします。
  • スタッフ(含むボランティア)にはガイドラインを渡し、常時確認できるようにします。
  • フリースクールに子どもが入会する前に、ガイドラインについての説明を、子ども本人と保護者に行い、理解を得ることとします。
  • 入会時には、ガイドラインを2部(保護者用・子ども用)渡します。

②外部への周知

  • 関係機関、連携団体等にもガイドラインの周知を図り、安心・安全な子どもの居場所のあり方、および子どもの権利についての理解促進に努めます。

③確認・見直し・拘束力について

  • ガイドラインを守った活動をしているか、団体内で定期的に検討する機会を設けます。
  • ガイドラインの内容について、団体内で定期的に見直す機会を設けます。
  • ガイドラインが守られていない場合、関係者に注意喚起を行います。
  • 注意喚起を行ってもガイドラインを守れない状況が続く場合は、他の者の権利・安全を守るため、団体との関わりを断つこととします。

3.スタッフのガイドライン

責任者(代表理事、フリースクール代表、管理者、学園長など)は、以下の全ての項目について、自身が遵守する責任と、全てのスタッフ(責任者を含むスタッフ、ボランティアなど)が約束を守ることに関する監督責任を負います。

① 会員メンバー(子ども、若者)に対して

  • 全てのスタッフは、会員メンバーの意見を真摯に受け止めます。
  • 全てのスタッフは、会員メンバーの自主性を尊重し自分の価値観を押し付けぬよう、配慮します。
  • 全てのスタッフは、会員メンバーの連絡先などの個人情報や秘密(家庭環境:ひとり親・生活保護など、過去の体験:いじめなど、現在の病気:夜尿など)を本人に無断で漏らしません。
  • 全てのスタッフは、自分の権限を利用して会員メンバーの人権を侵すようなことをしません。
  • 全てのスタッフは、どの会員メンバーに対しても差別・贔屓・心身への暴力・本人の嫌がる事はしません。
  • 全てのスタッフは、会員メンバーと1対1の秘密は作りません。必ず、複数のスタッフと共有します。
  • 全てのスタッフは、本人の許可なく会員メンバーの写真を撮ったり、使用したりしません。
  • 全てのスタッフは、宿泊活動などで会員メンバーと同室で寝る必要が生じた時は、必ず事前に保護者に説明し、許可を得ます。
  • 全てのスタッフは、遊ばせない、物を使わせない、とりあげる、言葉や態度で脅す等、懲罰を与えることをしません。
  • 全てのスタッフは、会員メンバーとの間で隠れてプレゼントをもらったり、あげたりしません。
  • 全てのスタッフは、音や匂いを嫌がる会員メンバーがいる場合、その原因を取り除くよう努めます。(チャイム音や化学物質過敏症に影響のある匂いの洗剤など)
  • スタッフは、責任者の許可なく会員メンバーと、長時間2人きりで一緒に過ごしません。
  • スタッフは、責任者の許可なく会員メンバーに対して、個人的に連絡を取りません。

② 保護者等(家族を含む)に対して

  • 全てのスタッフは、保護者の意見を真摯に受け止めます。
  • 全てのスタッフは、保護者等とご家庭の情報に関して守秘義務を徹底し、人権侵害行為をいたしません。
  • 全てのスタッフは、活動以外のことで保護者等に連絡を取る事はいたしません。
  • 全てのスタッフは、保護者等の連絡先をむやみに知ろうとしません。
  • 全てのスタッフは、保護者等に物品を要求したり、贈答したりはいたしません。
  • 全てのスタッフは、保護者会で話し合われたことは、守秘義務を厳守いたします。

③スタッフ間で

  • 責任者は、全てのスタッフに対して人権を侵す様な言動を行いません。
  • 全てのスタッフは、上下関係を利用した命令や強要は行いません。
  • 全てのスタッフは、宿泊活動などの際に責任者の許可なく、異性スタッフの部屋を行き来しません。
  • 全てのスタッフは、活動中に飲酒、喫煙をしません。関連する祝い事等でも、過度の飲酒を避けます。
  • 全てのスタッフは、会員メンバーの安全を守るための情報共有を徹底します。(移動時など)
  • 全てのスタッフは、スタッフ間で差別や贔屓をしたり自尊心を傷つけたりすることをしません。
  • 全てのスタッフは、知り得たスタッフの秘密を漏洩しません。
  • スタッフは、採用時に責任者と交わした合意・約束事を遵守します。
  • スタッフは、責任者の許可なく、会員メンバーや保護者の情報を交換しません。

4.第三者機関の活用

  • 各フリースクールが各地域の活用できる第三者機関と連携を図ります。
  • 第三者機関の活用方法を会員メンバーに周知します。
  • 公的な第三者機関が整備されていない場合は、作る働きかけをしていきます。

【第三者機関の現状】

日本における子どものための独立した権利擁護機関は、30以上の自治体に設置されており、その数は増えつつあります。名称は、子どもオンブズマン、子どもの人権擁護機関、子どもの権利擁護委員会など様々です。公的機関は、財政基盤、法的基盤を持ち、調査、改善要請ができます。

フリースクールも、このような公的機関を設置してもらうよう要請すべきです。

しかし、公的第三者機関が存在する地域は限られています。存在しない地域では、当面、民間の団体、地域の人々などを利用して、第三者機関を確保すべき状況にあります。

【子どもが相談できる第三者相談機関の必要性】

性的加害事件の七割は、身近な人間との関係で起こっています。そのため、被害者は「もし言ったら、あの人がクビになってしまわないか」というような心配をしたり、加害者から口止めをされていたりする場合も多いです。実際に自分を知っている人や関わりがある人には、相談しづらいものです。

運営者が信頼しているスタッフを告発することは勇気のいることです。また、運営者は、団体の社会的評価、団体の存続を危惧して、隠蔽に走ることもありますので、運営者、スタッフのみで子どもを完全に護ることはできません。

そのため、子どもや保護者からの相談を受け止めることのできる第三者機関が必要なのです。

【第三者の相談機関に相談が必要な場合】

  • 自分を知っている人には相談したくない場合。(例:自殺願望、自分を知っている人・関わりがある人からの被害など)
  • 相談すると、かえって自分が責められる可能性がある場合。
  • 信頼できる第三者でないと、事実をちゃんと聞いてもらえないかもしれない場合。

【第三者の相談機関として望ましい所(人)】

  • 秘密が厳守される。
  • 子どもが安心して話せる状況を作れる。
  • 相談者の立場に立てる。
  • 調査、意見表明、改善要請などの社会的有効性を持つ。
  • いずれの当事者からもお金をもらっていない。

【実例】 ※各団体で探すための参考資料

1. 公的機関

<実例>

・せたがやホッと子どもサポート「せたホッと」https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/kodomo/009/003/003/d00126700.html

・川西市子どもの人権オンブズパーソンhttps://www.city.kawanishi.hyogo.jp/kurashi/shimin/jinken/kdm_onbs/index.html

いずれも、子どもを対象にした、人権救済機関である。子どもから相談しやすいように配慮されている。スタッフの専門性は高い。マンガのパンフレット、ホームページなどを使って、「このような場がある」という周知に努めている。

このような機関の運営には多大の人件費、事務費がかかり、フリースクールのみでこのような機関を設置、運営することは不可能である。フリースクールから動きを起こして、学校の子どもたちを含めてすべての子どもたちが第三者機関による保護が受けられるようにすべきである。

第三者機関というと教育委員会が想定されることが多いが、教育委員会は第三者機関になり得ない。教育委員会は、学校の管理責任を負う立場であり、学校の不祥事はすなわち教育委員会の不祥事となる構造である。そのため、これまで多くの隠蔽が行われている。

2.民間機関

・CAP(キャップ Child Assault Prevention/子どもへの暴力防止)
http://cap-j.net/

当事者である子どもたちがきちんと説明を受けることが必要という方針。当事者は子ども。都道府県教育委員会などへの通知ではなく、子ども自身に理解でき、安心して選べるように説明を。「従わせる」のではなく「選べる」ように。

子ども、教職員、地域の3つのワークショップを提供し、地域との連携を創りだしている。地域の人が、第三者として機能する。受講料3万円程度。

・高松市の例

「子ども110番の家」

  • 高松市では家庭で虐待にあった子どもが利用するケースが多い。
    子どもの緊急避難場所として機能することで、地域の子ども達の安全を見守り、防犯対策上重要な役割を担うボランティア活動。
  • 子どもと書いているが、女性や高齢者の地域住民が「誘拐や、ひったくり」など犯罪被害に遭う、或いは遭いそうになった時に助けを求められる場所。
    助けを求める人たちを保護するとともに警察、学校、家族などへの連絡を行う事もある。
  • 必ず家には誰かが在宅していることが条件です。
    助けを求める人が安心して駆け込める場所として誰かがいること。

活動上の留意点

  1. 子どものプライバシーを尊重し、秘密を守ること
  2. 駆け込んできた子どもが顔見知りでも、その内容を安易に近所の人などに話さない
  3. 駆け込んできた子どもや大人がパニック状態でも、思いやりある対応を心掛ける
  4. 冒険を冒してまで、不審者(犯人)を追跡したり、取り押さえるような対応はしない
  5. 「子ども110番の家」マークは、地域ごとに独自のデザインを使用している

【電話相談機関】

〇子どもの人権110番 0120-007-110 / https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken112
法務局「子どもの人権110番」(全国共通/法務局・地方法務局の職員、または人権擁護委員が対応)

〇24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310 (なやみ言おう) / https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112210.htm

文部科学省(全国共通/電話をかけた所在地の教育委員会の相談機関が対応)

○チャイルドライン 0120-99-7777 / https://childline.or.jp

日本においては1997年に世田谷で試験的に開設された。1999年チャイルドライン支援センターが立ち上がった。2007年からはフリーダイヤルで18歳までの子どもの電話相談・チャット相談を受け付けている。

現在37都道府県に68のチャイルドライン実施団体がある。

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