文科省による2021年(令和3年)度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」結果の公表(2022年10月27日)
全国的に小中学校の不登校(30日以上の欠席)25%増の不登校約244,940人 前年196,127人。24.9%の増加
1、前年比24.9%増をどのように考えるのか?
文科省では、不登校児童生徒の急激な増加の要因を、コロナ禍での生活の乱れや特別活動(運動会、遠足、修学旅行等)が行えないことにより人間関係が構築できなかったこと、コロナ禍での休校やオンライン授業の影響をあげている。
そもそも不登校はこれまでも増加傾向であった。特に小学校ではこの10年間で3倍に増えている。コロナの影響はあるが、子どもたちの抱えた問題(人間関係の困難、教師からのハラスメント、一方的な授業で子どもの意見が聞かれていない=自分たちが大事にされていない)を見過ごす事はできない。
困難があった時の主な相談相手が保護者である(保護者30%,教師10%、スクールソーシャルワーカー8%)「不登校に関する調査研究協力者会議 報告書(2022年)」このことからも、これまで文科省が整備してきたスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが、不登校児童生徒の相談先になっていないという実態がある。
私たちは、これまでのように「学校に行かない児童生徒の問題」を学校に戻すことで不登校問題の「解決」とすることが、子どもたちをさらに追い詰めることにつながると考えている。子どもの学びや成長の場づくりに対してもっと関心を払う必要がある。本人の必要性、学び方に応じた学習の場として教育センター(適応指導教室)やフリースクールを活用しながら学習機会の確保をしない限り、相談さえもままならない子どもたちが増えてゆくだけである。私たち教育関係者が学校外の学びの場を増やせていない中で、不登校児童生徒の学習権保障ができない状態が続いている。
現状では全国のフリースクールにおいて、約7,000人の受け入れしかできない。(2022年フリースクール調査 調査主体:フリースクール全国ネットワーク、助成:株式会社セールスフォース・ジャパン)この現状の中、「相談・指導等を受けていない」状態にある不登校児童生徒は 36.3%に上昇している。
私たちは、増え続ける不登校の児童生徒の学校外の学びの場を多様な財源をもとに、整備していく必要がある。
2、子どもたちに教育機会を与えてほしい
本調査結果および日々の当該児童生徒への関りから、次の取組等の必要性を認識している。まずは「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」通称:教育機会確保法(以下、確保法)の存在の認知や、その中身の理解を社会的に深めていく必要がある。確保法においてどの子にも教育の機会を与えられる必要性がうたわれている。学校だけが学びの場となることの苦しさから解放される必要がある。本人の意思や状況にあわせて学校外で学ぶことが認められる社会になるために、超党派で構成している「フリースクール等議員連盟」と協力し政策提言を進めながら、学校外で学ぶ子どもたちの場づくりのための予算化、支援人材の育成を行う。そのための事業基盤として、都道府県ごとのフリースクールネットワークを拡充していく。
3、不登校を問題行動としてとらえていいのか
「不登校児童生徒への支援の在り方について」(通知)(平成28年)では不登校は「問題行動」と判断してはならない。と記されている。学校外の教育現場において目にするのは、学校もしくは家庭や地域から当該生徒の不登校が問題行動とされ、学校に戻る、戻すという結論を持って対応されるので、本人が精神的に追い詰められる状況も少なくない。法律の理解を深めながら、行政と連携した相談や本人支援のしくみづくりに取り組む。
4、不登校の子どもに休む権利を
不登校児童生徒の休む権利が教育機会確保法の中に定められている。どの子も学びたいという気持ちを持ちながらも、学校に行けないという苦しさを抱えている。
10代の死因のトップが自殺であるように、まだまだ子どもたちの命が十分に守られる状況にはなっていない。学校に行けなくとも、安心、安全の中で育ち成長できるという子どもにとっての固有の権利を大人たちはしっかり保障していく必要がある。
5、コロナ禍の影響と不登校との関係性(多様な連携で取り組みたい)
NPO法人フリースクール全国ネットワーク相談事業(2020年11月〜2021年12月)における相談件数465件から言える事は、不登校になる子どもたちはコロナの影響だけではなく多様な課題や困難を持っているということである。
私たちは、学校や教育委員会、フリースクール関係者だけで増え続ける不登校児童生徒の課題に寄り添う事はできないと考える。多様な主体と連携し、社会的な課題として共に子どもたちの学びと育ちを支えていく事を社会全体に呼びかけていきたい。